今日は久しぶりに美容室にカットとカラーをしに行った。定期的に毛量調整しないとただでさえ大きな頭がもっと巨大になってしまう。加齢により白髪も目立つ。もう限界だった。
カットもカラーもシャンプーもすべてマスクを装着したまま。飲み物サービスもなし。アシスタントの女の子とぎこちない会話をしていたが、その子の髪の色がとてもきれいなミントブルーだったので褒めたら喜んでくれた。黄色以外の大体のカラーは試したらしい。「黄色だけは頭おかしい人に見えるんでダメです」とのこと。確かに、美輪明宏ぐらいじゃないと似合わないかもしれない。
隣の席では美容師が男性客にシアバターを使った髪のセットの仕方を薦めていた。男性客が「シアバターって何ですか?シアって?植物性?動物性?」とたずねるも、美容師はしどろもどろで答えられず、聞いている私もわからなくて動揺した。シアバターとは、ロクシタンのサイトによると、『西アフリカから中央アフリカに生息するシアの木(アカテツ科シアバターノキ)の実から採れる植物性油脂のこと』だそうです。
帰りに本屋を覗いてみると、開いていた。短い時間で買い物しなければと思って、とっさに村上春樹の「猫を棄てる」を手に取った。透明ビニールで囲われたレジで店員さんはビニールの手袋をはめ、ブックカバーは本に巻かずに紙だけ袋に入れてくれる。
久しぶりに食料と運賃以外にお金を使い、充実した気持ちで家路につく。駅のホームで電車を待っていると、見ず知らずのおじさんが私の前を横切る際、一瞬歩みを止め、私に向かって大声で「2番は歌われておりません!」とだけ言って立ち去った。
家に帰るといるはずの夫がいない。リビングのテレビは録画していた朝ドラが8分29秒のところで一時停止になっている。どうやら夫はお風呂に入っているらしい。夫は一日に4回も5回もお風呂に入る。個室も仕切りもない我が家では風呂とトイレだけがプライベートスペースなので別にいいのだが、『朝ドラを8分29秒のところで止めて風呂に入りに行く』ということがなんだかおかしく感じた。
私のアトリエのトイレの水が流れない問題があり、大家さんに相談するべく気乗りしない気持ちを奮い立たせて向かう。相談する前にもう一度試してみようと流してみると、流れるではないか!安堵しながら買ったばかりの村上春樹を読む。文章も素晴らしいが、挿画も素晴らしい。短い本を一気に読み終え、もう一度用を足して帰ろうとすると、やはり流れない。なんと一日に一回しか流せないらしい。台所から水を運んで、流し込み、とりあえずごまかす。
おじさんが叫んだ、「歌われなかった2番」というのがどうにも詩的で心に残った。