TOKYO HAIR SALON DRIFTER

今までいろいろな美容室に行きました

『行きつけの美容室』が定まらない。上京してそろそろ6年が経とうというのに、しばらく通った美容室から、行ったことのない美容室に変えるということを未だに繰り返している。今まで通ったお店の数は合計20件は下らないはずだ。ちなみに上京する前はここまでの遍歴はなかった。腕を信用できる美容師がおり、浮気することもなくその人のいる美容室に通っていた。

上京したての頃はおのぼりさんで、わざわざ家から遠出して表参道や代官山などの「カッペが思いつくおしゃれエリア」に繰り出し、洗練された内装や、モデルにしか見えないレセプショニスト、私の好きなミュージシャンのカットを担当している美容師など、これぞ私が求めていた東京の美容室だという要素を満たすお店があったりして、それはそれで満足していた。しかし、なんだか通ううちに疲れてきてしまった。そもそも、定期的に通うには料金が高かった。

今度は自分が住んでいるエリア(南多摩)近くの美容室に通うようになった。料金は都心よりも安かったが、おしゃれ度は俄然下がってくる。そして美容師のテイストも都心とは違い、若干やさぐれ度が高く感じる。料金が安いことが賃金にも反映されているためだろうか。いくつかの美容室をぐるぐると巡回しながら、なんとなくここというところを絞っていく感じだった。しかしどこも決定打には至らなかった。

そのうちに都心に引っ越すことになった。もう表参道だろうが代官山だろうがわざわざ遠出しなくても行けるし、上京当時ほどアガることなく通うことができるだろう。しかしわざわざそんなところに行かなくても、都心なら家の近所にだって気の利いた店があるのではないか。そう思って、またいろいろな店を巡る放浪が始まった。

どこもそれなりなのだが、やはり「ここが終着点だ」と思える場所にはなかなか出会えない。トレンドを意識した髪型が私に似合っていなかったり、カラーやパーマ中に読むのが楽しみな雑誌がタブレットだったり(紙で読みたい)、あまりにガランとして美容師との時間が気まずく感じられたり、出される飲み物が不味かったり、大したことのないことが、それなりの滞在時間の間に蓄積されていき、次に訪れる際に二の足を踏ませる要因になる。

つい先日も初めての美容室に行ってみた。他に比べて少しお店が狭く、隣の席のお客さんとの距離が近かった。特に気になるほど近いというわけではなかったが、たまたま隣にいたお客さんがしゃべりまくるタイプの人だったので、自然と話す内容が耳に入ってくる。その内容は、とにかくそのお店、私も担当してくれた美容師を褒めたたえるというもの。「この前ここに来れなくて仕方なく別のお店に行ったんだけど、ひどかった~。やっぱりここじゃなきゃ!」といった調子で、お店が仕込んだサクラなのかと疑うほどだったが、私も耳を傾けるうちに「そこまで言わせるほどの腕前を持つ人なのかな…」と思い始めていた。

仕上がりは、いいような気がする。仕上がりの満足度は直後にはよくわからなくて、日を追ってどれだけ「いい感じ」が醸造されていくかで決まるように思うので、まだ確信には至っていない。おそらくは次回もこのお店に行くだろうと思うが、その美容師さんに教えてもらった「この近くの寛げるカフェ」が行ってみると全然寛げなかったので、またさ迷ってしまうのかもしれない。

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