BEARY OVERVIEW OF 2022

『ヒグマの会』ニュースレターの表紙を飾りました

気がつけばもう12月です。2022年も終わりです。コロナ生活も早4年目に突入しようというところですが、去年や一昨年に比べればだいぶ移動ができるようになり、少しずつ息抜きはできるようになってきたかもしれません。激動の世の中で今年の自分を総括すると、北海道旅行でクマ牧場の生のヒグマを見たことをきっかけに、“ヒグマを深めた”一年だったような気がします。いや、だから何?極まる話なんですが…、少しお付き合いください。ヒグマ的観点から私の一年を振り返ってみようと思います。

4月

北海道旅行でクマ牧場に行き、初めて見た生のヒグマに衝撃を受ける(詳しくは前の投稿に書いてます!)

至近距離で見たヒグマの存在感に圧倒される

6月

クマ牧場の売店で買ったヒグマの生態をイラスト入りでわかりやすく説明した冊子『ヒグマ・ノート』を発行した“ヒグマの会”という団体(ヒグマに関心のある研究者や狩猟者、農家、ジャーナリスト、一般市民などが発足した団体だそうです。設立は1979年)があることを知る。冊子の中に“仲間募集”と書いてあったので早速年会費3,000円を振り込んで入会する。

ヒグマの会入会とともに送られてきた本とニュースレター

7月

自分のクマの解像度が上がってきた気がして、クマ牧場で撮影した写真や動画を基にLINEスタンプを作ってみる

スタンプ制作にあたっては、クマの色味に一番苦労した(リアルな色だともっと黒っぽいが、それだとあまりかわいくない)

更に“ヒグマの会”でニュースレターの表紙イラストを募集していることを知り、応募。クマは何度も描いているのであまり苦労はなかったが、苦手な草木を描くことに苦戦する。

ラフ画。描いた時点の夏の様子を描いてしまい、発行時の秋の季節感を考慮していなかった

8月

応募したイラストが採用されたとの連絡が来る。正直応募は私だけだった可能性もあるが、やりとりをしたニュースレターの編集長はヒグマの研究者で、いわばヒグマのプロであり、そんなプロに私の描いたヒグマが認められたようで大変にうれしかった。11月に旭川で“ヒグマフォーラム”が催されるのでぜひお越しくださいと言われ、すっかり行く気に。

9月

NHKのクローズアップ現代で『謎のヒグマ「OSO18」を追え!』という特集が組まれる。見ると“ヒグマの会”の人たちが出演している。あれ…名前に見覚えが…と思ったら私のイラストを採用してくれた先生も専門家として登場。今更ながら「こんなガチの人たちが読む冊子の表紙が私のイラストでいいのか…」と不安になってくる。

10月

“ヒグマフォーラム”に備え、休みの調整をし、飛行機やホテルを予約する。旭川気分を高めるため、旭川出身の作家、三浦綾子の『氷点』を読んだりして、気分を高める。

11月1日

“ヒグマの会”から郵便物が届き、来た!と思って急いで開封したら正真正銘、私のイラストが表紙のニュースレターが入っていた。よし、これでヒグマフォーラム参加の名刺ができたぞ!とますます気分が高まる。これとは別に当日配る本当の名刺もあった方がいいかな?と思い、ついでに名刺も作る。

名刺を作成

11月19日

前日に仕事終わりで直接羽田空港に向かい、わざわざ空港ターミナル内の簡易ホテルに宿泊して、早朝の便で旭川へ。11月になっても生暖かい東京とは打って変わって、見えてきた旭川空港は雪!飛行機でたった1時間半なのに、期待通りの別世界に突入する。午前中に旭川市内に到着してしまったので、ホテルに荷物を預けてヒグマフォーラムが始まる13時までの間、『氷点』に登場した喫茶店“ちろる”に行ったり、旭川らぅめん青葉本店でラーメンをかきこんだりして旭川観光。

ナイス外観のらぅめん青葉

青葉で腹を満たした後、いざ旭川駅から徒歩15分ほどのヒグマフォーラムの会場へ。

遂にやってきたヒグマフォーラム。ポスターの素敵なヒグマイラストは旭山動物園の元飼育員という肩書がまぶしい絵本作家のあべ弘士さんによるもの
壇上
このパネル、ほしい!

会場は報道関係と思われるカメラも入り、席もほぼ埋まって熱気に溢れている。たまたま空いていた一番前の席に陣取る。“ヒグマの会”会長の挨拶、旭川市長の挨拶からフォーラムが始まる。なんとなくパネルディスカッションのようなものを勝手に想像していたら、合計9名の登壇者が近年増加傾向にある「街中に出てきてしまうヒグマ」との向き合い方についてひとりずつ語っていくという形式だった。研究者、市の担当者、NPO法人代表、報道関係者などが日々の活動とともに今後の課題と展望を語り、最後に旭山動物園の園長が“ヒグマ側からの提言”を述べて終わりという構成。当たり前だがとてもまじめな内容だ。

私のような一般人からすると、なんといってもヒグマフォーラムで語られるべきは話題の“OSO18”のことじゃないのか、“ヒグマの会”の人たちもテレビ出てたし…と思っていたが、一言も触れられる様子がない。会場では事前に質問票が配布されていたので、思い切って『“OSO18”は実際のところ特別なヒグマなんでしょうか?』と書いて提出。それがフォーラムの最後の質問票に答えるコーナーで読み上げられ、クロ現にも出ていた“ヒグマの会”メンバーが回答。曰く、「“OSO18”は自分が獲物とした家畜の牛に執着しない(ふつうヒグマは自分の獲物に大変執着する習性がある)といった特徴はあるが、特別大型のヒグマというわけでもなく、マスコミが騒ぐような怪物的なヒグマではない。“OSO18”が出没している地域はヒグマが高頻度で出没する地域でないだけに、人間の方がヒグマの対応に慣れておらず、そのことが問題を大きくしている」との見解だった。なんだよ、マスコミが騒いでるだけかよ、と思ったら、ヒグマフォーラム後の11月26日放送のNHKスペシャルでも『OSO18~ある怪物ヒグマの記録~』と題する特集をしていて、そこでも“ヒグマの会”の人たちが出演し、監修にも関わっているようだった。あれ、怪物じゃないんじゃなかったっけ?と“ヒグマの会”の立場に疑問を感じながら見ていると、確かに“ヒグマの会”の人たちは番組の中でも一言も“怪物OSO18″について語っているわけではなく、あくまで“一般的なヒグマ”について専門家として解説しているようだった。とはいえ、番組全体の印象からするとやはりおどろおどろしい演出はなされており、そのあたりの実際との乖離がヒグマフォーラムでも触れられなかった理由なのかな?と思ったり。

話が逸れてしまったが、13時から17時までの講演の合間の休憩中には野生動物調査用GPS首輪を展示する業者やヒグマよけ用の電気柵の業者のブースを覗いたり、フォーラムの運営を手伝っている様子の北大や酪農大の学生たちが売るクマグッズを買ったりして、私なりに“ヒグマフォーラム”を楽しんだ。あとはせっかく旭川まで来たので私のイラストを採用してくれた先生にご挨拶しなければ、と登壇者でもあった先生に休憩中コンタクトを図ろうとするも、先生はたくさんの人に取り囲まれていて、なかなか近づけそうにない。これは翌日のヒグマの会会員限定イベント“エクスカーション”に狙いを定めるしかない、と思い直し、疲れていたのもあってその日はそのままホテルに帰ることに。

野生動物調査用GPS首輪専門?業者の展示ブース
そのブースにあったヒグマの毛皮。撫でてみたら思っていたより柔らかい。いろいろな硬さの毛が混じっている?

11月20日

朝の8時45分という私にとっては大変早い時間に、“ヒグマの会”会員限定イベントに参加するため昨日ヒグマフォーラムのあった会場前に集合。定員40名だったはずだが、大型観光バスの前には40名以上は軽くいそうなほど大勢の人がいる。参加のためのお金も払っていないのに、思った以上の規模で昨日に続いて驚き。特に点呼があるわけでもなく何となくバスに乗り込み、よく知らない人の隣に座らせてもらい、何となくバスは発車。何をするのかというと、昨日のヒグマフォーラム登壇者数名がバスの前の方でマイクを握り「この辺りにヒグマが出没しまして…」とヒグマ出没スポットを案内していくという奇妙な遠足なのだ。ヒグマは川伝いに移動するようで、去年には旭川駅すぐ裏を流れる忠別川を伝い、駅近くの忠別橋付近でも目撃されているらしい。確かに“こんな街中にヒグマ!?”という感覚ではある。しかし決して口には出せないが、こんな身近にヒグマがいる環境は正直うらやましくもある。美瑛川の河川敷にクマよけの電気柵を設置しているのをわざわざバスを降りて見に行く。だんだんと、参加者の多くは学生らしいことに気がつく。昨日のフォーラムでも北大と酪農大の学生たちが運営の手伝いやグッズ販売をしていたので、そのまま泊まってこの遠足にも参加しているようだ。そのせいか、何となく本当の遠足めいた雰囲気がある。果たしてわざわざ東京からやってきたただのクマ好きは私だけだろうか、と、バスの中で盛り上がる内輪っぽい雰囲気が次第に窮屈になってきた。

ヒグマが目撃された場所をめぐるバスツアー
状況:もくげき
クマよけ電気柵に集う奇特な集団

街中をバスでヒグマの足跡を追ってぐるりと周った後、バスは旭山動物園に向かう。最後に本物のヒグマを見なければ“ヒグマの会”としては納まらない…からかどうか。そこもお金を払わず中に入れてもらう。昨日のフォーラムで登壇した園長の計らいなのだろうか。中で2班に分かれて、えぞひぐま館のバックヤードを見学させてもらうというボーナス特典まである。もちろんヒグマは“放飼場”という来場者に見られるスペースにおり、バックヤードの檻の中は空の状態だが…。中は独特の獣の臭いはするが、今年できたばかりなのでまだピカピカだ。

ようやく目にした本物のヒグマに改めて感動。旭山動物園のヒグマの名は“とんこ”

クマ牧場で見たヒグマと違い、旭山動物園のヒグマはエサを求めて芸もしないし、何匹ものヒグマと一緒に飼育されたりもしていないし、コンクリートの床でもない。一目に動物福祉的にかなりヒグマに配慮した環境であることがわかる。ヒグマはオスとメスでかなり体格差があり、オスに比べるとメスはかなり小柄なので、メスのとんこが「ちっちゃくね?」と客に言われているのを見ると不憫に思えてしまう。園長の説明によると、里に出てきてしまったとんこの母グマが駆除され、残った子グマのとんことその兄が新聞に紹介されてしまったことで殺すに殺せなくなり、頼まれた園長がとんこを引き取ったらしい。兄もどこかの動物園にいるのだとか。園長の説明で、命を預かった責任を取る覚悟のようなものが感じられたし、施設もそれにふさわしいものに見えた。

最後に会員が集まって“ひぐまトークセッション”なる質疑応答を園内のホールで行い、予定されていたすべての行程を終えた。ここにきてようやく勇気を振り絞って私のイラストを採用してくれた先生に挨拶をし、先生が私をニュースレター編集部の人たちに紹介すると「ああ表紙の!」と温かく迎えてくれた。もっと早く自己紹介すべきだったのだが、臆病な私からするとこれが精いっぱいであった。何とか名刺も数枚配り、“ヒグマの会”から離れ一人になる。団体行動苦手マンなので、ぐったり疲れてしまった。動物園でゆっくりスケッチしたかったのに、もう一度とんこを見て、あとはオオカミや白熊などを見ただけで帰ることにする。少し見て周っただけでもこのあまりにも有名な動物園が素晴らしいことは十分にわかったので、またゆっくり来たいと思った。

先生にはまたイラストをお願いしたいと言われ、来てよかったと思った。来年もヒグマを描いたりヒグマを見に行ったりしたいと思う。

ということでヒグマを深めたこの一年は、“ヒグマフォーラム”参加というビッグイベントで締めくくられたのでした。“ヒグマフォーラム”に参加して学んだこと、北海道のヒグマの数は年々増加し、人間の数は年々減少しているそうです。

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