なかなか先行きが見通せない日々が続いております。私はなんだかいつも以上にぼんやりとした気持ちでいます。春はいつも苦手で、花粉症や社会的なプレッシャーやらで押しつぶされそうになるのですが、唯一といっていいほど楽しみにしている春のイベントがタケノコを食すことです。
前回も食べ物の話でしたが、もう食べ物ぐらいしか心を浮き立たせてくれるものがないのです。それで、タケノコですが、あく抜きやらの下処理が恐ろしく面倒で、皮やぬかの大量のゴミが出るし、皮をどこまで剥けばいいのかよくわからないし、水煮でいいんじゃないかと夫は言うのですが、決してそうではないのです。香りや歯ごたえが全然違う。そうやってタケノコの炊き込みご飯や若竹煮をボリボリと食べるのがこの上ない幸せなのです。
夫はそういう私の気持ちが全然わからないようで、タケノコのことを「かろうじて食べられる木」などと言います。そういえば、むかし旅館で仲居として働いていた時、UAE(アラブ首長国連邦)の王族が泊まりに来て、最上級のおもてなしとして供した懐石料理の中にたけのこの若竹煮があったのですが、”Bamboo!?”と驚いており、木を食わせるつもりかと全く手をつけてくれませんでした(結局懐石料理のほとんど何も食べられず宅配のピザを取って食べてました)。タケノコを食べるのは世界の中でも中国、韓国、日本などの限られた地域だけなのだそうです。パンダか東アジアの人間ぐらいしか食べないんですね。
私は京都のタケノコがよく採れるところで生まれたせいなのか、とにかく春はタケノコを食べるというのが当たり前の習慣としてあったのですが、関東出身の夫はそうでもないようです。東京のスーパーで売っているタケノコは大体福岡産で、時間が経てばたつほどアクが出てくるのでもっと近場で採れたタケノコがほしいのですが、あまり売っていません。農林水産省のHPによると、主な生産地は福岡県 (6,199トン)、鹿児島県(6,088トン)、熊本県(3,089トン)、京都府(2,281トン)で、ほぼ九州と関西なのだそうです。しかも、普段食してる代表的な種類の孟宗竹(もうそうちく)は東北では育たないのだとか。西日本のタケノコの旬が終わったらもっと北のタケノコを食べればいいという目論見は外れました。
もっとうまいタケノコはねえかと、いつものスーパーでは飽き足らず八百屋やデパートにまで足を運んでチェックしているのですが、最近はどこでも売り場のおじさんが「もうすぐタケノコ終わりだよ~」と言って買わせる商法をしています。本当に終わりなのか、商売なのか、微妙なところです。私としてはゴールデンウィークぐらいまでは頑張ってほしいところですが、八百屋のおじさん曰く、桜と同じで旬が早くなっているそうです。
調理法は炊き込みご飯と若竹煮だけでも十分なのですが、若竹煮は「ほぼ罰ゲーム」だと夫が言うので、牛肉と炒めたものなどをよく食べています。